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映画紹介「土を喰らう十二ヵ月」 寄り添う犬は…

作家・水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二カ月」を原案に描いた人間ドラマ。
主演・沢田研二。
長野の人里離れた山荘で1人で暮らす老境の作家、ツトムさん。妻を13年前に亡くし、山で採れた実やキノコ、畑で育てた野菜などを料理し、梅干しや白菜づけをつくり、四季の移り変わりを実感しながら執筆する日々を過ごしている。
時折、担当編集者の若い恋人・真知子(松たか子)が東京から車を飛ばして訪ねてくる。
2人にとって、旬のタケノコやサトイモを料理して一緒に食すのは格別な時間だ。
ツトムさんの傍らにはいつも「さんしょ」という薄茶色の大きな犬がいる。
山椒が好きだった妻が名付けたというからすでに13歳以上だ。
恋人・真知子と一緒に暮らそうかなどと思った矢先、ツトムさんは病で倒れしばし入院。
取り残された「さんしょ」は1匹、朝な夕な、ひとけのない部屋の中でツトムさんの帰りを待つ。
お皿の上には誰が置いてくれたか山盛りのドッグフード。
無事退院してきたツトムさんは、残りの人生を一人で生き、一人で死んでいくことを決めて真知子と別れる。
終盤、雪の中から掘り起こした大根とゆず味噌を丁寧に料理し、「さんしょ」は雪の中ではしゃいでいる。
願わくは、ツトムさん、「さんしょ」を看取ってから逝ってください。
驚いたのは「さんしょ」役はタレント犬でなく、撮影地近くの民家で飼われているモモという犬だそうだ。
スタッフが良い犬がいないか探していたら、軽トラを追いかけてきて「志願」したという。
長い時間、監督やスタッフと一緒に過ごし、すっかりツトムさんの飼い犬だ。
2022年の公開。
大工の友人役で出ていた火野正平さんは昨年末、亡くなった。
モモは元気でいるだろうか。
(N・M)