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2025.02.21 コラム

映画紹介「土を喰らう十二ヵ月」 寄り添う犬は…

作家・水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二カ月」を原案に描いた人間ドラマ。

主演・沢田研二。

長野の人里離れた山荘で1人で暮らす老境の作家、ツトムさん。妻を13年前に亡くし、山で採れた実やキノコ、畑で育てた野菜などを料理し、梅干しや白菜づけをつくり、四季の移り変わりを実感しながら執筆する日々を過ごしている。

時折、担当編集者の若い恋人・真知子(松たか子)が東京から車を飛ばして訪ねてくる。

2人にとって、旬のタケノコやサトイモを料理して一緒に食すのは格別な時間だ。

ツトムさんの傍らにはいつも「さんしょ」という薄茶色の大きな犬がいる。

山椒が好きだった妻が名付けたというからすでに13歳以上だ。

恋人・真知子と一緒に暮らそうかなどと思った矢先、ツトムさんは病で倒れしばし入院。

取り残された「さんしょ」は1匹、朝な夕な、ひとけのない部屋の中でツトムさんの帰りを待つ。

お皿の上には誰が置いてくれたか山盛りのドッグフード。

無事退院してきたツトムさんは、残りの人生を一人で生き、一人で死んでいくことを決めて真知子と別れる。

終盤、雪の中から掘り起こした大根とゆず味噌を丁寧に料理し、「さんしょ」は雪の中ではしゃいでいる。

願わくは、ツトムさん、「さんしょ」を看取ってから逝ってください。

驚いたのは「さんしょ」役はタレント犬でなく、撮影地近くの民家で飼われているモモという犬だそうだ。

スタッフが良い犬がいないか探していたら、軽トラを追いかけてきて「志願」したという。

長い時間、監督やスタッフと一緒に過ごし、すっかりツトムさんの飼い犬だ。

2022年の公開。

大工の友人役で出ていた火野正平さんは昨年末、亡くなった。

モモは元気でいるだろうか。

                                      (N・M)

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